インタビュー:岡田弘先生

岡田弘先生 「男性不妊は無視されてきた」獨協医科大学埼玉医療センター岡田弘特任教授

日本の不妊治療の第一人者である獨協医科大学埼玉医療センターのリプロダクションセンターチーフディレクターの岡田弘特任教授。岡田医師のキャリアは日本の男性不妊の進化の歴史と言っても過言ではないかもしれない。エキスパートが語る日本の男性不妊のハナシ。(取材・文:Bable編集部/撮影:石橋俊治)

1980年に神戸大学医学部を卒業したのですが、当時から男性不妊を見据えていたわけではないんです。元々は内分泌内科医か、腎移植をする外科医になろうと思っていたんです。不妊治療にのめり込んでいった原点は「子供が生まれてくるって不思議」という根本的な好奇心です。受精という現象が不思議だし、受精に至るまでの精子の機能も不思議。精子って別に栄養を持っているわけでもなんでもなくて、遺伝子情報を卵に届けるだけです。それに非常に変な形をしている。射精後、膣内で長距離を動き回るのも不思議ですよね。

ただ、当時はまったく不妊治療自体、注目を浴びていませんでした。海外では体外受精が1978年に最初の子ども、ルイーズ・ブラウンが生まれた頃で、日本ではまだ始まっていませんでした。日本で顕微授精自体は95年頃から始まりました。そうしているうちに体外受精が登場しました。となると数が少なくて運動性が悪くても体外受精で解決しそうな気になってきた。体外受精の場合、卵一個に対して動いている精子が10の4乗、つまり1万匹くらいあれば充分受精するだろうと言われています。通常の受精だと2000〜4000万は必要と言われているので大きな進歩ですよね。

体外受精や顕微授精が登場したことで、次に目を向けたのが無精子の人から精子を取ってくる技術です。1万匹で受精する可能性が出てきたのだから、今度は完全に精子がない人の体内から精子を探し出す技術を研究し始めました。今は精子の処理についてなどに研究分野を広げています。

昨今、急に男性不妊が注目されてきましたが、私達は1980年代から研究を続けてきています。それまでは男性不妊は無視されてきたし、理解されていなかった。不妊治療は女性側だけやっておけばいいみたいな風潮は確かにありました。

今は卵の処理の改良だとか顕微授精の改良もいくところまではいったんですよ。受精率も少し良くなって、妊娠率も少し良くなって。流産率も少しずつ減って。でも何が欠けているかというと、男側の意識が欠けているわけです。

うちの病院では男女そろって検査から出産までワンストップで対応することができます。ぜひ不妊に悩んでいるご夫婦はお越しください。