専門医が語る、日常生活で気をつけたい男性不妊10のコト

2020.12.10
サウナに喫煙、飲酒の影響は…?

男の股間にぶら下がっている一対の球体、睾丸。あまりに当たり前のように人生をともにしてきたから、これまで省みることはなかった。

思えば不思議だ。そもそも“なぜ睾丸は内臓なのに外に出ているんだろう”。そんなシンプルな理由さえよく分からない人もいるかもしれない。そう、実は僕たちはあまり知らないのだ。睾丸について、精子について。

ならば専門家に話を聞いてみよう。

“男性不妊かも…?”と思ったら、最初に知りたい、精子に関する基本的な10のこと。(撮影:栗原洋平)

今回話を聞いたドクター

Q1:年齢と精子には密接な関係がある


それはその通り。女性の場合は生理が来なくなれば妊娠できなくなる、ということは明白ですが、男性の場合はわかりにくい。精子の力は20歳前後がピークで、35歳を超えるとだんだんと落ちていきます。画家のパブロ・ピカソは70で子供ができた、と語られていますが、それはごくまれなケースだから語り継がれているだけです。

Q2:良い精子を作るためにサプリを飲むのは効果的?


一応効果はあると思います。亜鉛やビタミン剤、コエンザイムQ10など抗酸化作用のあるサプリメントを服用するのは一定程度の効果が見込めると思います。

Q3:精子は禁欲して溜めた方が効果的?

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これは嘘ですね。溜めてはいけません。溜めるといっぱい出る、というイメージがありますが、妊娠に大事なのは「数ではなくて動き」だということが明らかになっています。だから数が少なくても非常に元気で良い精子が出たら妊娠するチャンスはあります。たとえ何億も精子がいても、動いていなかったら妊娠はできません。だから、基本的に新鮮な精子の方が妊娠させる力が高いんです。なのに長期間溜めると、在庫期間が長くなってしまう。すると死んじゃったり動かない精子が増えてしまいます。1カ月我慢をして、排卵日の1日を狙うよりも、定期的に射精をして、精子の鮮度を保ちつつ、排卵日には連続して妊活をするほうがいいです。

Q4:喫煙は精子にはマイナスの影響?


タバコは絶対ダメです。血液の流れが悪くなって、精巣の活動に影響を及ぼすだけじゃなくて、精子のDNAに直接ダメージを加えるからです。欧米ではマリファナも精子にとっては非常に悪影響を及ぼすと言われています。アメリカの男性不妊の外来に来たら最初に「マリファナや危険ドラッグはやってない?」と聞かれるくらいです。

Q5:飲酒は精子に悪影響?


お酒は飲み過ぎなければ大丈夫です。適度に嗜む程度にしてください。たくさん飲むとか言うのはまずい。欧米ではソーシャルドリンキング(社交的な飲酒)をやめた方がいい、と言われています。仕事上の付き合いのお酒ってついつい飲み過ぎちゃうことがありますからね。今、日常的に飲酒をする方で本気で男性不妊に悩んでいるのであれば、禁酒したほうがいいかもしれません。飲酒をやめれば数ヶ月すれば徐々に体は作り変わっていきますから、精子の質も改善すると言われています。

Q6:サウナやジャグジーに行っても影響はない?

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サウナなど、高温の場所にさらすのは絶対にダメです。ジャグジーなどぬるい温度でも長時間入るのは問題です。精子づくりにとって熱は大敵なんです。人間の内臓で唯一、睾丸だけが外に出ているのは冷やさなきゃいけないからなんです。それを温めてしまってはいけません。他にもデータが出ているのですが、下着はブリーフやボクサータイプではなく、風通しのいい大きめのトランクスを着用するべき。スキニータイプのズボンも蒸れてしまいますから、履かない方がいいでしょう。また、オフィスワークでは座っている時間が長くなってしまいがち。すると股間が蒸れてしまうので注意が必要です。

Q7:パソコンを乗せたりスマホをポケットに入れるのは大丈夫?


電磁波の影響はまだ明らかになっていませんが、そこまで大きくはないでしょう。ですが、パソコンを膝の上に乗せて作業すると排気熱で精巣が温まってしまいます。これは良くないので、避けたほうがいいですね。

Q8:高血圧などの生活習慣病も精子力に影響する?


高血圧や糖尿病、高コレステロールなどの生活習慣病を改善すると精子はすごく良くなることがはっきりわかっています。ですから、高血圧の人は塩分を控えたり、バランスのいい食事を心がけてほしい。よく「何を食べたらいいんですか?」と聞かれますが、これは難しいですね。ただ、大豆イソフラボンなどの女性ホルモン作用があるものは子供が欲しい男性にはあまりオススメできません。男性ホルモンの観点で言うと、フルマラソンやトライアスロンなど過激で高負荷な運動は男性ホルモンを抑えてしまいます。

Q9:薄毛の治療をしているが、男性不妊の治療には影響はない?

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AGA(男性型脱毛症)の治療と男性不妊の治療は両立しません。AGAの治療薬であるプロペシアやフィンペシアなどは男性ホルモンの活性を抑えるわけですから、精子を造る働きに悪影響を及ぼします。プロペシアやフィンペシアなどは子供ができるまでは止めておきましょう。あとはクラミジアや淋病などの性感染症にかかったことがある人は炎症を起こして精子の通りが悪くなっている可能性があるので、心当たりがあるなら精液検査を受けた方がいいでしょう。

Q10:精子力は遺伝することはない


これはまだはっきりしたことは言えませんが、精子が少ないという形質は遺伝する可能性はあります。これほど医療が発達する前の時代は、精子が少ない、もしくは皆無であれば、その代で淘汰されてしまっていたはずです。ですが、今は睾丸の中から精子を取ってきて、それで受精することもできるようになりました。まだ男性不妊治療の歴史は浅いですから、何代にもわたって精子の質や量が遺伝するかどうかははっきりとわかっていません。